透明水彩でも出来る! 〜とても便利なグリザイユ画法のやり方/メイキング〜
おこしやす つらら庵 ♪
ども、和雑貨屋つらら庵の職人、しょーちん。です!
今日は透明水彩好きの方々にとてもとても役立つ技法をご紹介しようと思います。
その名も、、、
- 1.グリザイユ画法とは?
- 2.対象それぞれに影を先に付けていく
- 3.グリザイユする影の色は?
- 4.それぞれに合った影の色で
- 5.影にも数段階ある
- 6.グリザイユの上から固有色を被せるように付ける
- 7.グリザイユ画法のメリット
1.グリザイユ画法とは?
しょーちん。知らなかったんやけど、今時はデジタル絵画の分野でも使われる言葉なんやね。
元々は油絵の画法です。
ズバリ、簡単に説明してしまうと、
グレー調の色彩で、先に陰影だけ付けてしまおう!
という事です。
もちろん水彩画にも応用できる方法で、むしろ透明水彩でこそ本領を発揮する技法であるとさえしょーちん。は思います。
今回はメイキング写真付きで順を追ってこの便利な技法をご紹介しようと思います♪
グリザイユでスケッチする事の利点も後述します。
2.対象それぞれに影を先に付けていく
コチラが今回技法を説明する為に描いた山と民家のある風景スケッチ。
しょーちん。のモロ地元の景色です(笑)
グリザイユする時、影を付ける目安にもなる為、物と物の境界線はハッキリさせて、鉛筆の線でしっかり描いていきます。
陽が当たっていない、影(陰)の部分を先に水彩絵の具で描いていきます。
3.グリザイユする影の色は?
一番遠景の山の影だけ描けました。
ここで、影の色についてですが、描こうとしている物の固有色、、、
例えばリンゴなら鮮やかな赤ですよね。
陽が一番当たっている所の色と言ってもいいかもしれません。
その固有色に、グレー系やセピア系の色を混ぜて、一段暗い色を作ります。これが影の色です。
リンゴで言えば、真っ赤な色に少しくすんだグレーを混ぜて、青味がかった赤にします。
4.それぞれに合った影の色で
影は一様に全て黒で付けて良いかといえば決してそうではなく、必ず対象それぞれに相応しい影の色を作り、分けて塗ってくださいね。
写真をご覧ください。
先ほど塗った遠景の山と、少し手前の山の影、色が微妙に違います。
手前の山の影は緑がより強い影になっていますね。
これは、遠景の山は空気遠近法(※大気中の粒子により、遠景になればなるほどグレー、もしくは青味がかって見える)により、少しくすんだ緑に見えるからです。
このように、自分の目に忠実に、対象をよく観察してありのままの色をそのままスケッチブックに落とせるよう練習してみてください。
5.影にも数段階ある
着々とグリザイユ出来てきました!
ここでよく絵を見ていただきたいのですが、、
、
どうでしょうか?
同じ色の影でも、濃い、中くらい、薄いといった3段階くらいの階調で描かれています。
これは、影にも陽が全く当たらないところや、すこーし陽が当たり、影が薄くなっているところなど、決して濃ゆさは単純ではないので、ここを丁寧に描き分けておくと格段に立体感が付くという事です。
先ほど影の色を作った時に、予め濃い目の色を大目に作っておき、それを各状況に合わせて薄めつつ使用すると良いです。
山の全てに影が塗れたら、下の民家にも丁寧にグリザイユします。
建造物に出来る影の色は複雑で少し難しいのですが、それぞれに合った色で影を付けておきます。
この技法で描く水彩画は、グリザイユする時間が占める割合が8割くらいなので、言ってしまえばグリザイユさえ頑張って済ませてしまえば後は塗り絵みたいなもんなんです。
ガンバレ!(笑)
はい、このように全ての対象にグリザイユが入りました!お疲れ様!
ここまで来たら後は楽しいですよ〜♪
6.グリザイユの上から固有色を被せるように付ける
さてさて、当たり前の事ながら透明水彩絵具はガッシュ(不透明水彩絵具)と違い、下の色が透いて見えます。
なので、影の上から固有色をベタ塗りしても影は消える事は無いんです。
グリザイユするときは丁寧に影を拾って塗っていましたが、この段階では固有色(陽の当たっている明るい対象その物の色)を影の上からベタ塗りしていきます。
いかがでしょうか?
ベタ塗りしているだけなのに、しっかりと先ほどグリザイユで入れた影がいい仕事してくれてませんか??
魔法のように立体感が付いていきます。楽しいやん♪
ポイントは、影がしっかりと活きるよう、上から塗る色は必ず透明水彩で、しかも濃ゆくしすぎない事がポイントです。
遠景から徐々に手前に塗ってきます。
この時も、山は緑だと決めつけずにあくまで目が捉えたありのままの色を探って、それぞれに塗ってくださいね。
家も、先に影を付けてあるので単色をベタ塗りするだけで驚く程立体感が付きます。
グリザイユ万歳!(笑)
全てに色が入り、スケッチの完成です♪
ご覧のように、透明感のある水彩画でこそこの技法は真価を発揮すると言っても過言では無いので、製作時間の限られた野外スケッチなら尚更の事このグリザイユ画法をお勧めします!
7.グリザイユ画法のメリット
では最後に、グリザイユ画法のメリットについて考えてみましょう。
水彩画を描かれている方なら分かる人も多いのでは無いかと思うのですが、
影を後から付けると変に浮いて見える事ないですか??
影って本当に奥深くて、それぞれ多様な色をした物に出来る影の色を上手く作って塗るとなるととても修練の要る事なのです。
ですが、このグリザイユは最後に影の色の上から固有色を塗り重ねるので、自然な影の色になりやすい。
カラーセロハンを重ねていくように、うまく上の色と混ざり合い、柔らかな、対象そのものに出来た影を表現しやすいのです。
これは、後から影を塗り重ねるとすると水彩画では至難の技です。
後一つ。
屋内で、固定された定位置にある電灯の元描くスケッチならともかく、野外のスケッチでは光源が太陽なので、時間と共に刻々と影の形は変わります。
この時のこの影の感じがイイ!
と思って描き始めても、鉛筆の線画→固有色着彩→影の着彩、、、の段階まで来るともう描き始めた時の陰影は様変わりしている事もしばしば。
影が変わると雰囲気もガラリと変わります。
影はそれほど絵において影響力大なのです。
でもグリザイユでならどうでしょう?
鉛筆の線画に1〜2時間は要するものの、鉛筆画さえ終わればすぐに影の着彩に進めます。
先に影を描いておけば多少曇りになろうが安心して絵を進めれます。
極端な事を言えば、影さえグリザイユしておけば後はその場から対象の写真を撮っておき、帰ってから写真を参考に着彩を進める事も可能です。
‥ま、全て現場で済ますに越したことは無いですけどね。σ(^_^;)
いかがでしたか?
グリザイユ画法、やらない手はないでしょう?
ちなみに今回説明した事と同じ内容の動画版もつらら庵YouTubeにて公開していますので、よければ併せてご参考になさってください♪
コチラから→https://youtu.be/rwfBwfD-mIM
鉛筆の線画スケッチの段階の動画はコチラです。
コチラから→https://youtu.be/il0Q_msZtQM
是非是非グリザイユ画法で楽しいスケッチライフを!
【参考資料】
この技法をしょーちん。が知ったのは、中学生の頃求めた奥津国道さんの本が元です。
以来十数年この本にお世話になっています。
見てるだけで楽しいワクワクした気持ちになる素晴らしい本です。
説明もわかりやすく丁寧で、初心者の方にもオススメ♪
また、おこしやす つらら庵 ♪
◯本日の絵◯
芥子園画伝を元に、蘭を水墨で描いてみました。うーん、同じような形で葉が折れてる所が2つあるなぁ。難しい。
◯本日の猫◯