つらら庵日和

つらら庵日和。

つらら庵の職人 しょーちん。の日記。

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要点だけを捉えた水彩画のススメ。

 

おこしやす つらら庵 ♪

 

まいど、和雑貨屋つらら庵の職人、しょーちん。です。

もう2月が終わろうとしてるね。コワイコワイ。

でも3月あたりになると少し陽気も出てきて、ちょっと厚着して外でスケッチでもしよかいと言う気にもなる。楽しみ♪

 

‥元々は絵やハンドメイドの記事を更新してきた当ブログ。

しかし、いつのまにやら日々の雑感主婦ブログのような様相を呈してきている。

ブログのおばはん化が半端ない。(かと言っておじさん感はない。おばはん。)

 

ここらでまた絵の記事も更新しておこうと思う。

 

今回のテーマは、省筆で表す全体感。

 

絵とはホンマに深いと思う。

一見、髪の毛の幾本まで見える様な、緻密に描いてある絵でも、何故かその場を包む空気感や一体感が感じられない絵がある。

翻って、一気呵成に殴り描いた様な絵でも、何故だか次のモーションまで想起させそうな絵もある。

 

この違いは何なのかというと、描き手がどこに注目して描いているかによるものと思う。

 

フェルメールの様に、1㎝四方絵から切り取っても、「これはパンの表面だ」「これはゴブラン織の重たそうな布だ」とわかる様な"質感"に対するこだわりもあれば、決して上手い絵ではないが、ゴッホの星月夜の様に、今しも夜の海へ出て、まるで自分で見上げた星空の様に感じる空間や動きに対するこだわりもある。

 

絵の技法は描き手の趣味趣向に依るので、どちらがどうとも言えないけれど、やはりしょーちん。は絵で自分と同じ擬似体験をして欲しい。

それは視覚と感覚のシェアや。

 

手を伸ばせば掴めそうな枝葉を描きたい。

それには、どうも写実では限度があるように思う。

 

今回は、以前行った水彩ドローイングの制作過程をご覧頂きながら、どうすれば動きやイキイキした空間を作れるかを一緒に考えてみて欲しいと思う。

 

因みにしょーちん。は水彩が苦手な方です。

YouTubeを始めた1年前くらいから本格的に勉強し出したけど、透明水彩は他の絵画と違い、非常に複雑な製作過程を伴っていると思う。

手の出し易さに反して、極めるのは非常に難しいと思う。

常々、塗り重ねてモデリングする不透明水彩から初心者は始めた方が良いと思っている。

 

‥さて、前置きが長くなりましたが、この作で何かを掴めた気がした人物ドローイングを製作過程を追いながら説明しよう。

 

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まず、鉛筆でアウトラインを取る。

透明水彩はその名の通り透明感が大切で、ガッシュ(不透明)が"折り紙"なら、透明水彩は"カラーセロハン"。

折り紙は重ねると下の色を覆い隠すが、カラーセロハンは下の色と混ざり合い、複雑な色を作る。

よって、下書きといえども馬鹿には出来ない。

線を最後まで作品の一部として残す作風にするのか。

線はあくまでガイドラインで、最後には消えて無くなって欲しいのか。

これを考える時自ずと形の取り方も線の強さも変わってくる。

 

しょーちん。は人物画の場合動きを大切にしたいので、下書きは動き(ムーブマン)を重点的に記すことが多い。

人体の中心を通る背骨のねじれや角度を大切にする。頭をレントゲンにして骨を見る。写す。


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骨を基準としたアタリが取れたら、次はバック(背景)について考える。

これがしょーちん。を一番悩ますところ。

水彩独特のバックとは、いったい何なんだろう?

ここへ来るといかに自分が東洋画独自の余白というものを尊重しており、そして、それに悪くいえば甘えているかを思い知らされる。

 

「バックってなんや?何色で塗れば良い?」

 

皆目わからない。

実際の背景ならわかる。街中に居る人物を描く時、背景は当たり前のことながら街やから。

 

でも、自分がよく目にしてきた水彩画(特に人物画や静物画)は、画家独自の色彩感覚だけが全面に現れた四次元空間になっていることが多い。

実際の背景にインスパイアされたバックの色と分かることも有れば、全くの空想で描かれているようなバックの絵も有る。

ピンクの背景なんて実際にはあり得ない。


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これに対処するには、好きな画家の背景の処理から学ぶことが一番良いと思われる。

自分がどうしたいのかが分からなくても、他人の絵の好きな部分を見つけることは易い。

 

その色を取り敢えず真似てみれば良いと思う。

このバックで足がすくみ、次のステップに進めない人も多いので、最初丸パクリで良い。

欲を言えば自分の描きたいモチーフに合いそうな背景を借りてくる。

 

次第に自分らしい背景の処理の仕方が創造される事を願って。

 


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もちろん背景なので、人物より前に出てきてもらっては困る。

大抵は紙を水筆で濡らしておき、ウエットインウエット(紙面が濡れているうちに色を塗る)で処理をする。

すると色にモヤが掛かり、背景と手前にあるモチーフとの整合性が取り易い。


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これはセンスでもあると思うけども、最初の段階では形にそこまで気を取られなくてもいいと思う。

例えば、作例では人物の軸となる足は例外として、上半身は紙がまだ濡れているうちに肌の色や上着の色を差した。

 

描き始めは極薄い色で、人物というより空気感を描いていると思って塗るといい。

これが後々生きてくる。

基軸となる足までぼかすとボケボケの絵になるので、ここでは描き分けた。


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透明水彩もデジタル絵画のレイヤー構造(積層とでもいうのかな?)に似ていると思う。

デジタルの技法は全く知らないんやけど、おそらく線画、下地、影、仕上げ、、、、と、各段階で保存をして、それぞれの作業を進めていく事だと大掴みにイメージしている。

 

水彩で言えば"保存"は"乾かし"。

 

乾かす事によって、次に塗る色やステップに移ることが多い。

作例では大まかな全体の色を、空気感を大切にして塗り、保存。


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次が、立体を描く時に欠かせない影(陰)の表現。

 

目を細めると、物体に広がる繊細なグラデーションの中間が飛び、大まかな明暗の対比を伴った影が見えてくる。

それを薄いところからしっかりと先程の下地の上から描く。

 

所々水筆でぼかして馴染ませてやると、明から暗につながる繊細な陰影をも表現できる。


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影の色も大切で、まず、影は黒だという思い込みを捨てないといけない。

"黒い"影は基本的に無い。

黒に見えても、どこかしら茶味や青味を帯びている。

本体の色でそこにできる影の色も変わるので、

よく観察して色作りをする。


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細部を描きながら影の塗り重ね。

影の質感によって、乾かして塗るのか半乾きの時に塗るのか、、、。

これは経験によって習得するしかないと思う。

 

作風や描く物の物質感によっても変わるので、好きな水彩画をプロセスを逆算して想起してみるのも面白い。

 

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ここに来ると分かると思うけど、2回目の色を塗った時に、1回目にぼかしながら塗った下地の色が動きや空気感を上手く演出してくれている事を理解してもらえると思う。

 

作例で言えば顔の周りや左手のところに見られる肌色の滲み。

 


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最後の仕上げで漸く細部を描く。

アクセサリーや衣服の質感、髪の毛の表現まで全てこの段階の作業。

ハイライトをガッシュ不透明水彩)の白で入れるのもこの段階。

 

水彩初心者は逆にこの細部の説明から入ってしまうので、仕上がりの絵が濁り、重たい絵になってしまうんやと考えられる。

 

しょーちん。も細部を先ず気にしてしまう方なので、一年続けて漸く少し感覚が掴めてきた。

 

最後の仕上げまではずーっと固有色(りんごなら赤、きゅうりは緑など)とそこに落ちる陰影のみを拾っていると考えればいい。

 

描いているのは"りんご"ではなく"色と影"。

皮のつぶつぶ感やヘタの表現は最後の最後でええんや。

 

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完成。

 

この一枚の簡単なドローイング(製作時間は20分ほど)はしょーちん。に次のステップの橋渡しをしてくれたように感じたので、今回割と細かくプロセスを記事にしてみた。

 

‥ところでしょーちん。は昔から、30分前に仕入れた情報や知識を、さも10年前から備えた知識のように話すのが得意だ。

 

もちろんウソをつくのは嫌なので、「いつ覚えたの?」の聞かれたら素直に「30分前」と答える。しかし、誰も聞いてこないのでそんな風を装っている。

 

他人に話すことによって自分に言い聞かせ、改めて事柄について順序立てて研究する機会を設けられる事がある。

 

このブログの絵画技法記事なんて正にそうで、その時その時理解できた事を、さも10年前から有している知識のように話すと思うのでこれからも宜しくです。

 

‥いつ覚えた知識かは極力聞かないでね。。

 

 

また、おこしやす つらら庵 ♪

 

■つらら庵YouTube便り■

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コチラから→https://youtu.be/VCk8bIMJQQo

 

今回の記事の動画版です。

自主練配信として、グダグダと語りながらの動画なので実用性はと問われると甚だ不安なのですが、少なくとも描いているところを動画で見れるのは誰かにとって何かのヒントになる事もあるかと思う。。