油煙墨と松煙墨の違いと墨汁の作り方。
おこしやす つらら庵 ♪
ども!和雑貨屋つらら庵の職人、しょーちん。です。
絵や書道を、墨汁ではなく固形墨を硯で下ろした墨で描いた方が良いことは前回YouTubeを交えてご紹介しました♪
コチラから→https://www.youtube.com/watch?v=oHJkzMFtEW4&feature=share
ではでは、今回は固形墨の種類別特徴と、固形墨での墨汁の作り方について説明してゆこうと思います!
①固形墨の種類
まず、固形墨には大きく分けて2つの種類があります。
何を基準に分けられているかと言うと、固形墨の原料である煤(すす)です。
固形墨は、煤を粘着剤である膠(にかわ)で練り固めたもの。
膠で練られていると言う点ではどの固形墨でも一緒なのですが、煤が違うのです。
-2020.4.30日追記-
※油煙墨と松煙墨の違いについて、YouTubeに動画をまとめました。
良ければ本記事と併せてご覧ください♪
コチラから→https://youtu.be/-kt9BJGDyOI
例外として、煤を原料としないイカ墨の固形墨や、白墨(高校の時数学の先生がチョークの事を白墨と言っていて時代を感じた。ここでいう白墨はチョークではない)、朱墨などがありますが、書道や絵で使うことはあまりないです。
②油煙墨と松煙墨
ではでは、2つの煤には何か違いがあるのでしょうか?
左が松煙墨(日本製)、右が油煙墨(中国製)です。
煤は煤でも、"何を燃やして得た煤か"が違うのです。
松煙墨は、その名の通り、松の樹皮を燃やして取った煤から出来ています。
油煙墨は、菜種や胡麻などの油分を燃やして取った煤から出来ているのです。
③油煙墨と松煙墨の見た目の特徴
固形墨が、原料となる煤の違いで分けられている事を知って頂きました。
では、それぞれ制作をするにあたり何が違ってくるのかを見ていきたいと思います。
まず、表現上の事はさておき、固形墨自体を見ていきます。
こちらが油煙墨。中国製です。
(実は中国製か日本製か、また、古い墨か新しい墨かでも違いがあるのですが、それはまた別記事で改めて‥)
磨り口を見てみると‥
ツヤっ!として光っている事がお分かりかと思います。
このように、油煙墨にはツヤがあるのです。
続いてこちらは松煙墨。国産です。
磨り口は‥
先ほどの油煙墨とは違い、まるでツヤがありません!
お肌なら油煙墨がいいですね♪
このように、松煙墨はつや消し、マットな質感です。
これは、硯で下ろす事なく固形墨を見分けるためのヒントにもなるので是非覚えておいてくださいね!
④墨の磨り方
それでは、墨を硯で磨ってゆきます。
まず、油煙墨を小型の端渓硯(たんけいけん)で下ろします。
油煙墨と松煙墨の磨り方の違いはありません!
どちらも静かに、そして力を決して入れる事なくゆっくり硯面を撫でるように弧を描くようにして磨ります。
中国の古語に、"墨は病婦に磨らせろ"というものがあります。
"病の女性ぐらいの非力さで磨れ"という事です。
‥というか、
病気のご婦人に墨を磨らせるとは何事か(笑)
⑤油煙墨と松煙墨の違い
ではではいよいよ気になる、作品を作る上で両者の墨はどう違うのか、です。
ズバリ言いましょう。
科学的な見地から言うと、粒子の大きさが違い、見た目的な見地から言うと、色が違います。
2種類の墨を磨ったものを、水で薄めて見てみましょう。
左が油煙墨、右が松煙墨です。
違い、わかるでしょうか?
一般的に、油煙墨は茶色みがかり、松煙墨は青みがかっていると言われます。
ゆえに、油煙墨を茶墨(さぼく)松煙墨を青墨(せいぼく)と呼んだりもします。
ただ、あくまで墨というものが基本"黒"であるという共通理解の上での"青""茶"です。
青っぽいかな?茶色っぽいかな?くらいの意識で判別してね。
中には油煙墨でも茶色でなく、青に感じるものや、横山大観が使った明墨(墨作りの天才達が活躍した明の時代に作られた墨)は、紫を感じさせると言います。
墨色は奥が深く、書道家や画家が、たかが"黒"にこだわるのもそのためです。
⑥油煙墨と松煙墨の和紙の上での違い
では、この墨液を使って、滲む仮名用和紙に描いてみましょう。
こちらが、油煙墨を使って、下ろしたての硯から水で薄めず直接取った濃墨から、水で薄めたり、更に薄めたり墨と濃墨を筆の中で混ぜ合わせたり(水墨技法:調墨)して描いた物です。
こちらが同じように松煙墨で描いた物。
色の違いや滲み方、分かりますか?
並べてみましょう♪
色の面で言えば、やはり先ほど言ったようにそれぞれの色の特徴が出ているように思います。
ただ、1番濃い墨(濃墨)では、そこまで色の違いはハッキリしません。
それぞれの色の違いは、墨を薄めるとよく現れます。
筆跡の質感で言うと、松煙墨にはツヤがなく、マットなベルベットを感じさせる質感です。
油煙墨にはツヤがあり、濃く磨ればその筆跡もややツヤめいて見えます。
和紙への滲み方は、材料の問題だけではなく墨の製造過程や、墨が作られてからどれだけ時間が経っているかにもよるので、一概に特徴を容易に述べる事は出来ません。
ただ、一般的に松煙墨は粒子が粗く、油煙墨は微細なので、滲み方も松煙墨の方が素早く和紙に引っかかってカスレやすく、油煙墨は和紙の目に入り込むように繊細に滲む事が多いです。
⑦油煙墨と松煙墨のどちらが良いか
では最後に、油煙墨と松煙墨、どちらがより良いのかについてです。
これは、作風や好みによります。
どちらが上等ということでもなく、作家が肌で感じ、選び取るべきだと思います。
その日の気分によって変えてみるのもいいですね!
でも何故か一般的に水墨画を嗜む者は、松煙墨(青墨)を好む傾向にあります。
しょーちん。も光を吸収するような青黒い墨の痕が好きです。
でも、自分がトキメク色を選べば良いのだ!
ちなみに、青墨が良いからといって、墨に青い科学顔料を混ぜた固形墨も販売されています。
好きなら仕方ないのですが、ハッキリいってしょーちん。は使い物になりません。(笑)
青も、行き過ぎると下品になるんだなぁ〜これが。
墨色は難しい。
⑧まとめ
・固形墨の磨り口のツヤで種類が判別できる。
・磨り方は両者共に同じ。ゆっくりと磨る。
・油煙墨は茶色がかり(茶墨)松煙墨は青みがかる(青墨)
・両者の質に上下はない。好みに準じて使うべし。
いかがでしたか?
墨は、作家にとって一生掛けて探求すべき色だとも言われています。
ただ黒一色と思うなかれ。"墨に五彩有り"(中国の古語)なのや。
YouTubeで、その墨を一筆で彩り豊かに表せる方法を動画にまとめました!
良ければこちらもご覧ください♪
コチラから→https://youtu.be/sUkxSUWIvN4
それでは、本日は日本人の古の心でもある墨についてお話しさせて頂きました。
最後までご覧くださりありがとうございます!
また、おこしやす つらら庵 ♪
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