日本画 胡粉(ごふん)の作り方。 ~お料理感覚で作るシンプルな方法~
おこしやす つらら庵 ♪
この間は日本画の要、これが無ければ始まらないという膠の溶き方をご紹介しました(^^)
今回ご紹介するのも、日本画ではとても大事なもので、これを覚えてから日本画の道が始まると言われる程肝心な画材です。
じゃん!
引用:https://www.gazaihanbai.jp/upload/save_image/006000/gohun-002.jpg
胡粉(ごふん)です。
牡蠣やハマグリの殻を粉砕して風化させ、精製しフレーク状にしたものなのですが、
日本画では単純に”白色”として使われるほか、下地作りにも使われる応用範囲の広い絵の具です。
近年はマニキュアとなって、若い古風女子(どんな言葉やねん(笑))にも注目を浴びました。(#^^#)
引用:http://pds.exblog.jp/pds/1/201202/12/63/d0194563_1546515.jpg
膠の加減でマットな感じに仕上がったり、艶っぽくなったりする質感が再現され、なかなかコスメと相性がよく、良いアイデアだったと思います。
ご興味がある方は”胡粉ネイル”で調べてみて下さい。
色んな日本っぽい色が揃っていて見ているだけで楽しいですよ♪
…さてさて、話を戻しましょう。
前回骨描きを済ませたしょーちん。の桜。
この絵の下地用に胡粉作りをしてみたいと思います。
先ほども少し関連してお話しましたが、日本画では単純に白色として使われるほか、
下地剤としても使われます。
日本画と言えば、何十回、何百回と色を繊細に重ねていく絵画。
上に重ねられてゆく絵の具たちを確実に画面に定着させるために胡粉を下地に塗っておくのです。
まぁ、簡単に言えば、ツルツルした和紙に胡粉を塗ってガサガサした粗い絵肌にし、これから塗る絵の具の粒子が引っかかりやすくしておくのです。
論より証拠。
早速見てもらいましょ~(^^)
①道具の準備
道具を準備します。
まずは、この間作り方を説明した膠。
これは絵の具の接着剤みたいなものです。
これが肝心の胡粉。
ところで、この胡粉には等級というものがあります。
目の粗い下地用の物から上質でキメの細かい”飛切(とびきり)”と言われる高級品まで。
「じゃあもちろん上質な飛切で!絵の上達に金に糸目は付けないぜ!!」
と言うあなた、そういう単純な物でもないんです(;^_^A
キメが細かい上質の物は、大変艶やかで美しい絵肌を持つ反面、重ね塗りしすぎるとひび割れ易いというデメリットがあります。
要するに適材適所というやつです。
”下地には目の粗い胡粉を持ってきて、絵の最終仕上げに上質な胡粉を掛ける”
これを覚えていてください。
実際の胡粉の種類の説明、使い分けは後日改めて項目を設けようと思います。
取り敢えず今日は作り方ね♪
これはオーガニックな化粧品作りとかをやった事のある人はもしかしてお家にあるかもしれません。
乳鉢と乳棒です。
専用の物がこれといってある訳でもないのですが、日本画用として新たに購入した方が無難ですね。
お茶碗より少し大きいくらいの物が使いやすくておススメです。
これでフレーク状の胡粉を細かく細かくします。
では作ってみましょう!
②胡粉を乳鉢で摺る
まず、乳鉢に胡粉を袋から適量出します。
こ量は使用目的や絵の画面の大きさによって変えなければならないので一定しませんが、この後こねて団子状にしたときに、ビー玉ひとつ分くらいになるぐらいの量でしょうか…。。
って言ってもピンと来ませんよね(笑)
日本画は感覚で覚えないといけない所が多いので、数をこなして徐々に体で覚えて下さい!←なげやり(笑)
では乳棒で摺っていきます。
握る手は、棒全体をしっかりと全ての指で包むようにする。
力をいれて摺るのでズレないように。
このように力を入れつつ、中心から外側に渦を描く様に摺ります。
お料理をする人ならゴマを摺った事ありますよね?
あの感じです。日本画は本当に、お料理する時の目分量のセンスが非常に要求される絵画です。
なので、女性向きといってもいいですね。
でも、する時は丁寧かつ力強く!!ここは男の部分!(笑)
ゴリゴリとベビーパウダー状になるまで続ける。
手が痛くなります(~_~;)
10分くらい続けていると、乳鉢の側面に粉がへばりつくようになってきます。
こうなったら細かくなってきた証拠。
どこで摺るのを止めるかは非常に難しいのですが、こうして指で触ってみて、少しでもつぶ感があったり、チリチリした感触があれば摺りが足りません。
出直し!(笑)
ベビーパウダー状になれば摺りの工程は完了。
使い古した筆などでへばりついた粉を中心に集めます。
この摺りの作業が後の絵肌の滑らかさに響いてきますので、念入りかつ丁寧に行ってください。
あと、粉が舞うので汚れてもいい場所でやってね。(笑)
③膠を入れ、こねる
摺りあがった粉を乳鉢から絵皿に移します。少し大きめの皿が作業しやすくておススメ。
そして、粉の山の頂上は指で少しくぼませておきます。
富士山みたいに見えへん??(^^)
ここで登場するのが前回作った膠。
冷蔵庫で保管して有りますので冷えて固まり、出したところでは煮凝りの様にプルプルしています。
これを液状に戻すために、お湯で湯煎しておきます。
先ほどの胡粉の山のくぼみに膠を少し入れる。
ここで重要なのは、少しづつ様子を見ながら一滴、一滴慎重に入れると言う事です。
一滴加えてはコネ、一滴加えてはコネを繰り返します。
粉全体に膠が行きわたる様に…
すると、次第にまとまり、団子状になってきます。
ここまでくると、膠の加え方はより慎重にしなければなりません。
目指す団子の硬さは ”みみたぶ”
これもお料理ですね。すいとんを作るような感じです。
団子に近いこの状態になれば膠も匙で直接加えるのではなく、指の先に少し付けた膠を団子に移してコネ、艶のある状態に近づけます。
ボソボソした感じでもなく、ベタベタと指にくっつく感じでもないくらいがベスト。
ここまで来たらコネの作業は終了です。
④胡粉を百叩きする
「市中引き回しの上百叩きと処す!」
何やら時代劇に出てきそうな言葉ですが、これから胡粉をたたいてより一層膠と胡粉を馴染ませてゆきます。
よく日本画の技法書などで紹介されている方法は、「団子にした胡粉を勢いよく絵皿にぶつける」
という方法なのですが、しょーちん。はこの方法に少~し疑問を持っています。
なぜなら、皿に胡粉を何度も何度も投げてぶつけていると空気に触れるので団子の表面が乾燥し、カサカサになります。
なのであまりしょーちん。は好みません。
そこで、狩野派で継承されているもう一つの方法を取ります。
画像にあるように、”乳棒で団子を叩く” と言う方法です。
これだと団子は空気に触れにくいので艶やかな状態を維持できます。
画像では写真を撮るしょーちん。の手が塞がっているので皿の上で叩いているような状態になっていますが、実際は利き手ではない方の手のひらに団子を載せ、棒で叩く様にして下さい。
皿の上で叩くと割れてしまいます(;´∀`)
パイ生地を作る様に折りたたんでは叩きを繰り返します。
するとどうでしょう。
このようにほんのりと艶が出てきます。
ここまで来たら百叩き終了。日ごろのストレスが少しは発散出来た事でしょう。。(笑)
⑤胡粉をひも状にしてアク抜き
次は両手で胡粉団子を擦り合わすようにしてひもを作ります。
この時ブチブチとひもが切れるようなら先ほどの膠とのコネの作業が足りていない証拠です。
綺麗なひも状になったら、蛇のとぐろの様に皿の中心に渦を作っておきます。
お湯を用意します。
温度は、 ”指をやっと入れて置けるくらいの熱さ” 、要するにかなり熱いが我慢できなくはない温度です。(笑)
個人差があるかもですが、一つ言えるのは、沸騰間近のお湯は温度が高すぎると言う事です。
やけどに気を付けなはれや。。( 一一)
先ほどのとぐろ胡粉になみなみと注ぎます。
胡粉全体が浸かった状態で1分放置します。
この作業の時にお湯が白く濁るようなら膠との練りが足りない証拠。
もう一度摺りの作業から出直してください。
…もう一度やる気力が有ればね。。(笑)
⑥胡粉を溶く
1分経ったらお湯を捨てます。
この時に膠を一滴加える方法も有りますが、作風によって方法はまちまちです。
しょーちん。はこの胡粉は下地に使うので、一滴だけ加えました。
最初は指で優しく溶きます。
ぬるま湯を少しずつ加える。
徐々に力も加えて。
中指の上に人差し指を添えると力が入ります。
この溶き方は日本画絵の具を溶く時全般に使えます。
トロリとした胡粉液が出来れば完成!
余り薄め過ぎてはダメですよ!
⑦ごみを取ったら完成。どやさっ!
コネコネしたり叩いたり。
大分手で弄んできた胡粉ちゃんには恐らく小さなゴミやほこりが入っている事でしょう。
そのまま絵に使って固まってしまうと絵肌がボコボコして汚くなります。
この段階で細い筆などを使い、丁寧にゴミを取り除いておきましょう。
全て取り除いたら…
純白に輝く白い絵の具の完成!!(^^)
ど~ですか?日本画では白一色作るのにもこれだけ労力が掛かります。
それでも日本画を描く理由??
引用:http://i1.ytimg.com/vi/lvB35mvYCDI/maxresdefault.jpg
それは、何にも代えがたい日本画特有の美しさ、日本画でしか出せない美があるからです。
この娘の顔も今回作った胡粉で描かれています。
光を吸収するようなマットな質感で有りながら、艶もある。
これは油絵には無い味です。
手間暇を犠牲にしてまでも表現したい物がある。
一見面倒に見える日本画が現代まで脈々と受け継がれてきているのは、偏にこの日本画特有の美しさが人を魅了するからです。
出来上がった絵の具にはホコリが入らないようにラップを掛けておきましょう。
ここまで手塩にかけて胡粉を育てたのです。
我が子の様な愛着があなたにも既に湧いているはず。。(笑)
今日も長い記事をお読み下さりありがとう御座いました。
この記事が日本画を少しでも知りたい方の一助になれば嬉しいです(^^)
次回はいよいよ塗っていますよ!(^^)
それでは今日も一日ありがとうございました~☆
また、おこしやす つらら庵 ♪
つらら庵YouTubeでも胡粉の作り方を動画で分かりやすくまとめています!
良ければ併せてご覧ください♪
コチラ→https://youtu.be/_DGJPAPtTJc
〇何となく水墨DEアニメ〇
…なんやっけこのアニメ。
人気やと言うから描いてみたけど忘れた。。
まぁ、恐らく魔法もののアニメです。(笑)