つらら庵日和

つらら庵日和。

つらら庵の職人 しょーちん。の日記。

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東山魁夷回顧展へ。~技法面での美術鑑賞~

 

おこしやす つらら庵 ♪

 

ども、和雑貨屋つらら庵の職人、しょーちん。ですっ!

この間行ってきた東山魁夷京都展から早くも2週間以上経ってしまいましたね。。

 

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見てきた感覚がフレッシュな内にブログにしたかったのですが、思い入れがあり過ぎてなかなか書き始める事ができませんでした。

 

記事の内容もどうしたものかと。

アプローチも色々と考えていたのですが、展覧会のカタログを辿って行くように書くならつまらんし、いっそこのブログでは日本画を描くしょーちん。ならではの見方で、

技法面から感想を述べてみる事にしました。

 

…したというか、もうそういう見方しか出来なくなってるっチューのが正直なところなんやけどね(;^_^A

 

ではでは、しょーちん。流に行ってみよう♪

 

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「残照」

 

回顧展ですから、もちろん展示も画家の生きた年代順に展示されています。

最初にかかっていたのがもちろんこれ。「残照」です。

 

戦時下で自らに爆弾を巻き付け、敵の戦闘機に抱き着いて自爆する訓練をさせられていた魁夷。

その訓練の帰りに見た、鹿野山での心象が画因になっています。

 

魁夷は晩年になるにつれて使う色が制限されシンプルになっていくのですが、この三十代の作品では茶色を基調としたとても複雑な色使いがされていました。

戦争が終わり、肉親を全て病で失った魁夷。

この絵を描きながら何を思ったやろうなぁ。

 

あ、ちなみにこの京都展とても混雑してて、とてもじゃないけど真正面からじっくり見れる感じではありませんでした(;^_^A

 

もうね、恥をかなぐり捨てて「俺が俺が!」の精神で前に出て行かないと近くで見ることはできません。(もちろん見ている人の邪魔になってはダメだけど)

 

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しょーちん。も必死で人と人との間を塗って横から前から見ましたよ(^_-)

 

魁夷さんって繊細なタッチじゃないですか。

グラデーションも穏やかで。

 

でも近くで見ると結構粗い絵具を(岩絵の具には粒子の大きさが色々ある)用いて盛り上げるように描いてありビックリしました。

大きい絵なんかは近くで見るとモヤモヤしててよく解りにくいんだけど、離れて見るとしっかりとおぼろな山々や空が現れてくる。

 

近づいたり離れたりしながら少しづつ描いて行ったのが見て取れました。

 

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「道」

 

これも代表作の一つです。

以前このブログでもご紹介しました。

 

turara-an755.hatenablog.com

 

 

turara-an755.hatenablog.com

 

この作品ね、しょーちん。が思っていたより小さかったです。

 

日本画ってバカでかいじゃないですか(笑)

でも、これは魁夷作品の中でも小さい方だと思います。

 

でもね、描き方と言うか、スケールを大きく見せるよう至る所に工夫が見られましたね。

例えば道その物。

 

遠近法を少し誇張する事によりあたかも目の前に道が続いているような感覚になります。

あと草。

 

ビックリしたんですけどね、画像では分からないけどこの草むらも手前の方は一本一本を丁寧に描いてありました。

あと道に転がっている石ころみたいなもの。

 

一つ一つ丁寧に。

 

こういうのも実際に足を運ばないと気づかない事ですよね。

 

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馬のシリーズも展示されていました。

 

もちろん見せ場なので展示の最後の方(*'▽')

この作品も”魁夷の青”と呼ばれるだけあってとても幻想的でした。

 

日本画は鉱石を砕いた岩絵の具を使って描くので、青はどの画家も使っているのですが、なんで東山魁夷の青と平山郁夫の青は違うんだろう?と思っていました。

 

本物を見て分かったのですが、魁夷の青には下塗に紫系の絵の具が塗られている事が多かったです。

これにより、早朝の澄んだ空気のような靄のような独特の青になってたんですね。

 

平山郁夫が描く広大なシルクロードの宙天に掛かる深い青とは全然違う表現になっていました。

 

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この作品もとても魁夷さんらしい着眼だと思います。

魁夷が描きたかったのは陽に煌く新芽。

 

画像では分かりにくいけど、バックを鬱蒼と茂る濃い緑で処理し、手前に掛かるレースのような若葉を際立たせる手法です。

ほんとにね、煌いてたもん。

美しかった。

 

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魁夷といえば青なんですけどね、こうした雪中の白い風景も良く描いています。

 

これも凄い作品なんですよ。

よく画面の隅から隅まで精密画の様に描きこんだ絵を見て「凄い!」と人々は言うけどね、この絵をご覧よ。

 

真ん中は殆ど真っ白で何も描かれていないように見えますが、どうですか?

雪がこんもり積もってますよね??

 

胡粉や方解石を砕いた絵の具を恐らく使っているんでしょうけど、近くで見てもまだ踏み荒らされていない柔らかな雪をみるようでした。

そして魁夷さんの雪は何故か暖かい。

 

描く事よりもいかに描かずして ”匂わせるか” 。

 

思い知らされました。

 

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同じ雪景からこんな作品も。

 

風景画家として知られる魁夷の作品には人物は最初期の作品を除くと一切出てきません。

人物はおろか、動物さえ出てこない。

 

先程の馬の連作くらいです。

 

しかし、この作品では雪積る木に一羽の山鳩が背を丸めて止まっています。

 

僕は絵を描いてて、

 

「う~ん、なんかここ妙に間が空いたなぁ。鳩でも描いといたろ!(*'▽')」

 

と思う事もしばしばなんですが、魁夷さんはそんなことしないと思う(笑)

ここに不意に現れた鳩は何なんだろうか?

魁夷さんの分身にも思えますね。しかも絵の中でも独り…。

 

とても静かな作品でした。

 

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圧巻だったのは唐招提寺に奉納された襖絵が水墨を含め、全面展示されていたこと!!

10年を掛けた畢生の大作に圧倒されてしまいました。

これについては言葉もでません。

とにかくスケールが大きかったです。

 

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水墨画も何点か展示されていました。

 

これも近づいて見て気づいたのですが、純粋に生の紙に墨だけで描いた時のにじみではない様な気がするんです。

 

魁夷さんの独特の靄の掛かったような描法を活かすために、紙にも白い胡粉や細かい岩絵の具を下地として塗っていたのではないかと思いました。

そして若干の色が入ってる(?)ような気も…。確証ではないけど。

これによって墨の艶が抑えられて、深い霧が立ち込める濃密なベルベットのような空間が生まれていました。

魁夷さんにしか描けない水墨です。

 

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そしてなんと最後の最後、展覧会場を締めくくる絵は魁夷さんの絶筆である「夕星」でした。

 

いや、ほんまにね、これを見た時違和感しか無くて。

だって、今までの魁夷さんの絵柄じゃないもん。

 

もちろん青を使う事やグラデーションの付け方なんかは魁夷さんの特徴を表すものやけど、構図と言うか、なんか不自然でしょ?

まるでマグリットの絵を見てるかのような不自然さが有ります。

 

等間隔に並んだ木立は魁夷自身と亡くなった父、母、弟だとも言われています。

そして空にはたった一つ輝く星…。

 

魁夷さん自分が描く最後の絵だと知っていたんやね。感覚で。

 

 

技法面の勉強も含め、作品数の多さもありとてもいい展覧会でした。

見ごたえ十分。

 

 

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生前はスケッチブックを小脇に抱え、色々なところをスケッチして回ったそう。

上の写真は「道」の主題にもなった道路です。訪れた時にはもう舗装されてしまってますね。

 

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この写真もとても好きでね。

 

誠実な魁夷さんの人柄がにじみ出ているようです。

生前「描く事は私にとって祈りだ」と語っていたそう。。

 

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魁夷が死ぬまで使っていた画室。

小さい物はここで描いたそう。

 

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何枚も何枚もスケッチして、一つの作品にしてゆく。

 

静かな所で静かな絵を生み出していたんでしょうね。

いいなぁ。僕も絵を描く為だけの部屋が欲しい!!(笑)(*'▽')

 

 

かいつまんだだけの記事になってしまいましたがいかがでしたか?

本当はもっともっと素敵な作品がたくさんあったのですが紹介しきれないので(^^;)

ついこの間から東京での巡回が始まりました。

 

ご興味のある方は是非静かな空間を楽しんでみて下さいね☆

 

それではこのあたりで!

今日も一日ありがとうございました~☆

 

 

 

また、おこしやす つらら庵 ♪

 

※記事内の画像は全て画集を撮影したものをUPしました。

 

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