日本画・乾いた岩絵具の再利用方法! ~ 一番簡単な膠抜きのやり方 ~
おこしやす つらら庵 ♪
こんばんは、つらら庵の和雑貨職人兼日本画描きのしょーちん。です!
本日は日本画の絵の具である岩絵具の膠抜き(かわぬき)の方法をご紹介しようと思います♪
乾いてしまった絵具をそのまま水に流しているあなた!
この記事を読んで岩絵具を正しく再利用してくださいね。
・膠抜きとは?
まず、膠抜きについて説明いたしましょう。
日本画では基本的に、岩石を砕いて作った顔料である岩絵具を、動物の皮を煮出して抽出した粘性コラーゲン、膠で溶いて自分で作ります。
日本画を少しでも描いたことがある人ならもちろん知っていますよね(^_-)
なので、都合よく制作で作った絵具を使い切ってしまえればベストなのですが、大抵は余ってしまいます。
そのまま放っておくと…
このように膠が乾き、絵皿に絵具がこびり付いてしまうんですよね。
もったいないなぁ~。結構高かったんだよな~と思ってしまうのが人間の心情。
(いや、実際に高価な物は15gでウン千円もするんですよ。)
出来ればここに水を注ぎ再利用したいもの。
しかし、膠は一度乾き切ってしまうと劣化し固着力が落ちるので、そのまま水に溶いて使用する事は出来ません。
再利用するために、乾いた岩絵具から膠だけを除去し、リセットして、岩絵具を膠で溶く前の更の状態に戻してやるのです。
これが膠抜きです。
これから順を追って解説していきましょう♪
・乾いた絵具に湯を注ぐ
乾いた絵の具はこのように完全に絵皿にこびりついています。
これを剥がすために、お湯を注いでやります。
カッチカチやぞ!ゾクゾクするやろぉぉぉぉ~!
…古。
お湯の温度は、指を入れてどうにか我慢できるくらい。(笑)
えっ?正確な温度を教えろって?
どうせ言ったところで計んないでしょ。(笑)
身体で覚えるのが大事なのや!(`・ω・´)
・指でひたすら絵具を洗い出す
お湯を注いだら冷めないうちに、指で絵の具の粒子を洗い出します。
まずは縁の方から徐々に溶いてゆきます。
こうする事で無駄なく絵具を集める事が出来ます。
縁が綺麗になったら、いよいよ本格的に絵具を洗い出します。
中指の腹で、絵具の粒子を絵皿に擦り付けるように洗います。
絵具の粒子から膠分を押し出すイメージで。
ぐりぐりと洗います。
割と力強くやっても大丈夫です♪
・分離を待つ
全体的に洗えたら、そのまま2~3分放置します。
するとこのように、岩絵具と膠を含んだお湯が分離します。
水と絵具の比重を利用するんですね。
ちょっと分かりづらいですね(;^ω^)
これは、溶いている絵具が白緑と言われるとても細かい絵具だから、分離しにくいためです。
でも、これで完全に分離しています。
これは、先ほどの絵具と同時進行で膠抜きを進めている絵具です。
こちらは白緑に比べて少しだけ粒子が粗く重いので綺麗に分離していますね(^^♪
これで絵具の粒子から膠分を抜く事が出来ました。
・膠を含んだ湯だけをそっと捨て去る
さて、ここから膠を含んだ湯だけを捨てます。
この作業が一番難しく慎重にならなければならないシーンです。
まぁ、慣れてしまえば大丈夫なのでぜひポイントを押さえてチャレンジしてみて下さいネ!
まず、分離した絵具の皿をそっと持ち上げます。
この時は傾けず、水平にボウルや筆洗などの上まで移動させて下さい。
上まで移動させたら、一気にお湯を捨てます。
この時のポイントは、下に沈んだ絵具まで捨ててしまうんじゃないかと心配するあまり、ちょろちょろと捨ててしまわない事です。
ゆっくりと捨てると水流に絵具までつられて流れてしまいます。
一思いに、しかし、早過ぎずがポイント。
あまりにも勢いよく捨ててしまうとこれまた絵具まで出て行ってしまいます。
じゃあどうすりゃいいんだ!
と言われそうですが(;^ω^)(笑)
躊躇なくスムーズに捨てる。
と言う事を念頭に置いてやってみて下さいね。
するとこのように、粒子だけが絵皿に残ります。
大成功!(*´▽`*)
ちなみに、当たり前なのですが粗く比重の重い絵具の方が絵皿に沈みやすいので、お湯を捨て去る時も割と楽に捨てる事が出来ると思います。
細かい絵具は逆に難しいです。
この湯を入れてから捨てるまでの作業を2~3回繰り返します。
欲を言えばきちっと3回繰り返した方が無難でしょう。
付け加えておきますが、岩絵具に胡粉や水干が混じった物は再利用できません。
然るべき方法で、自治体の処分法に従って破棄して下さい。
岩絵具同士が混ざった物は、膠抜きをして再利用できます。
ただ、他の絵具と一緒の保存ビンに保存する事はせず、ジッパーの付いたポリ袋などに別途保存して下さい。
出来ればどんな種類の絵具が混ざっているのか、マジックなどで袋に記載しておくと次回使用時に把握できて便利です。
・絵具を乾かす
さて、粒子から膠分を完全に除去する事が出来ました。
これで絵具を溶く前と同じ状態です。
後は、絵具から水分を飛ばし乾かすだけです。
しかし!そのまま放り出しておいて良いのか??
日本画の絵肌はとても繊細です。
少しでも埃や毛が入っているととても見苦しい!(。-`ω-)
そこで、つらら庵流の必殺技を伝授なのや!
用意するのはこちら!!
シュインシュインシュイン~♪
普通のティッシュ~!!!(/・ω・)/
…ドラえもんの声は皆さんの脳内変換に任せた。(笑)
これをね、絵皿にふわっと被せます。
そして、
絵皿の下に、ティッシュの端を巻き込んでいく。
これこのように。
この状態で静かな所に安置し、最低丸一日放置します。
ティッシュを被せる事によって埃の混入を防げますし、心なしかティッシュの通気性、吸湿性のお陰で早く、良く乾く気がします。
是非お試しあれ!(^_-)-☆
乾けば元通り膠で溶く前の岩絵具に戻っています。
一度膠抜きをした絵の具も、念のために元あった保存容器に返す事はせず、別で保存しておきましょう。
・まとめ
いかがでしたか?
折角の美しい日本画の絵具。
最後まで感謝の念を込めて使いたい物です。
皆さんも上記のポイントを押さえて制作に活かしていただければ幸いです♪
因みに先ほど膠抜きした絵具は…
この作品に使用して余った物です(^-^)
はい。やっとこさ咲きましたよ桜。
桜が終わるころに桜の絵を完成させる。
こういう所がひねくれ者のしょーちん。らしくてええやないの。(笑)
それでは今回も長い記事を読んで下さりありがとうございました~☆
また実践編ちょこちょこやって行きますのでまたみて下さい~。
~ここだけは押さえたい!まとめ~
・水干や胡粉が混ざった物は再使用できない
・湯を捨てるときは潔くスムーズに
・よく粒子から膠分を洗い出す
また、おこしやす つらら庵 ♪
つらら庵YouTubeにて、膠抜きの方法をご紹介しております!
今回の記事と併せてご覧頂けたら嬉しいです♪
コチラ→https://youtu.be/w7eP3eah8Q8