日本画小品制作の流れ 苺を描く
おこしやす つらら庵 ♪
毎日寒いですな〜。
畳の寝室からフローリングの居間に移る時の足の裏の冷たさ…。(>_<)
冬は朝起きる時が嫌ですね。
ささっ!今日は小話無し!
すでにちょっと喋ってもーてるけど^^;
昨日ちょこっと話してた日本画制作の流れについて、はじめての方にも分かりやすく製作過程の写真を付けてご紹介しようと思っていたのですが、制作過程を順を追って撮影した椿の絵の写真が、どこを探してもデータが残ってなかったので、(消したんかな??)別に保存していた、めちゃくちゃ簡潔に制作を追った苺の例でお話しようと思います。。
椿の絵の方がわかりやすいんやけどなー。(^_^;)どこ行ったんやろ、データ…。
上記の理由から今回の制作プロセスは、超初心者の方に日本画の描き方の流れを大まかに何となく知ってもらう為のテキストです。
なので、筆や絵の具等の道具の扱い方や、日本画上達の要である膠の準備などは今回は書きません!道具の扱い方等はまたそれぞれ細分化して記事にしますね(^^)
① 下図を作る
まず、大前提として、今から描こうとするモチーフの事を良く知っておく事が肝心です。
「よし!じゃあ苺についてググるか!!」と思った方、
しっかーく!!!!ヽ(`Д´#)ノ(笑)
絵描きに取って物を知る作業は辞書を引く事でも、ウェブ検索をする事でも有りません!!
スケッチです!!!( ̄ー ̄)b
兎にも角にもスケッチする事。
日本画の巨匠達も毎日のようにスケッチをしています。
最初は簡単な線でのスケッチでもいいので、横から見たり、触って質感を確かめたりしてモチーフの記憶を作って下さい。
良いスケッチが出来、何となくモチーフの感じがつかめたと思ったら下図を作リます。下図とは、作品の出来上がりを想定した図の事ですが、日本画ではこの下図の線を元に制作をして行くので、決して下書きだと思って楽に考えず、この時点から気を引き締めて描いてください。この段階では消したり描き足したりが出来るので、納得の行くまでどうぞ。
作例ではスタンダードに中央寄せの三角形構図を取っています。
1番安定感が有る構図なので、モチーフが複数個(人)からなる物の場合、三角形を意識するとまとまりやすいですよー。
1番大事なのは日本画の場合線なので、細かいデティール等はこの時点では描かなくて結構です。作例でも、影等は描かず必要最小限の線で描いています。
②転写
納得の行く下図が出来たら本紙に転写します。
本紙とは本制作用の和紙です。(油絵の場合はキャンバスね。)
下図の紙は何でも大丈夫です。作例もコピー用紙を使っています。
下図の線を本紙に写すことを転写と言います。大作の場合は、和紙に木炭の粉を清酒で溶いたものを塗って作った念紙(ねんし)という紙(カーボン紙みたいなもの。)を使って転写しますが、作例のように小品(小さい作品の事。)の場合は直接下図の裏に4Bくらいの柔らかい鉛筆で塗り、下図自体をカーボン紙にしてしまいましょう。この時下図の全面に塗らなくとも、下図の線を描いた部分の裏だけで大丈夫ですよ。全面に塗っても余白は転写しないし本紙が汚れるだけなので、、、。塗れたら余分な鉛筆の粉をティッシュで軽く落とし、本紙の上にそっと載せて下図の線を尖ったものでなぞります。
鉛筆でも大丈夫ですが、複雑な図の場合、下図の線と同じ鉛筆の黒だと、どこまでなぞったかわかりにくいので赤のボールペンを使うとわかりやすいですよ。でも、ボールペンに鉛筆の粉が詰まってしまうので、僕は地道に鉛筆で時々下図をめくって本紙にちゃんと転写されているか確認しながらやっています(^_^;)
全ての線をなぞり終えたら本紙はこんな感じです。ちなみに本紙は水張りをしたり胡粉下地を塗ったりしていますが、今回は全て省きます。取り敢えず流れを知って欲しいので…。
下図の線を転写する時はあまり力いっぱいなぞらないように。本紙に傷が行くので。。。
③骨描き
転写された線は淡く、少し擦っただけで簡単に落ちてしまいます。制作終盤までこの線は大切に残していきたいので墨でもう一度転写された線を描き起こす作業をします。これを骨描きと言います。文字通り制作の上でも" 骨 "になるので重要な作業です。絵の具を重ねていくので最終的には骨描きは無くなりますが、(敢えて残すこともある。)骨描きがマズいと次の工程も上手く行きません。筆は上質な面相筆を使い、いきいきとした線で骨描きしましょう。硯で下ろした墨を使います。
いい線が引けましたか??転写の線をなぞると言いましたが、ただなぞるだけではいい線は引けません。転写の線を目安に、改めて線を引く気持ちで勢い良く描きます。なぞるだけだとどうしても勢いが出ず弱い線になりがち。墨は間違っても消せませんので平素から筆に親しみ、いい線を引けるよう訓練をしておく必要が有りますね。
骨描きは線のみで良いのですが、僕はこの段階から薄めた墨で淡く陰や隈を入れておきます。絵の具で塗りつぶすので意味がないように思えますが、この陰が絵の具を塗る段階で良い指標となり、雰囲気を出しやすいんです。全て描き終えたら羽箒などで余分な鉛筆の粉を払っておきます。
④下塗り
苺がなぜ黄色に!?しかもはみ出してるし…。(・・;
ご心配なく、これも計算の内です♪
日本画の絵の具は西洋画の絵の具には無いある特徴が有ります。日本画の絵の具は岩絵の具というものを使うのですが、粒子の大きさが色々あり、粒子番号が小さい程粗く、大きい程細くなります。例えば群青8番と群青12番なら、8番で描いた絵肌は砂絵のようにザラザラして、12番で描いた絵肌はつるりと滑らかになるのです。そして、日本画では細かい絵の具を下塗りで使い、粗い絵の具は仕上げに使う事が基本になっています。もちろん作風によって色々ですが、粗い絵の具の上に細かい絵の具を塗ると乾燥した時に剥がれやすいので、塗るとしてもうすーく雰囲気を出す程度にとどめましょう。
作例ではセオリーを踏んで、日本画の絵の具の中でも1番粒子が細かい水干絵の具(すいひえのぐ)を下塗りとして使っています。なぜ赤い苺なのに黄色かと言うと、これは絵に共通して言えることなのですが、淡い色から徐々に濃ゆくしてゆく事が基本だからです。いきなり濃い色から描くと失敗しても消せませんし、なにより微妙な雰囲気を出すことが出来なくなってしまいます。
苺の赤の中にも少し黄色がかったところもあったので黄色て下塗りをしました。線からはみ出しているのも、この後バックを塗った時、苺だけが背景から浮いてしまうのを避けるためです。
⑤上塗り
下塗りが完全に乾いたのを確認して、いよいよ苺の赤を塗ってゆきます。この時も、せっかく塗った下塗りを覆い隠さないように、少しづつ様子を見ながら塗ります。葉っぱの部分も下塗りしましょう。
苺のみずみずしさが伝わるような塗り方を…。
⑥バック下塗り
バックとは背景の事です。あなたがスケッチした苺の背景には、テーブルがありグラスが有り、色々とごちゃごちゃしたものも背景に見えていたことと思います。それをそのまま描くのも良いですが、特に日本画は自分のイメージで自由に背景を描く事が多いです。
僕は苺の温かい色とは対照的な深い青を選びました。これによって、孤独の中で3個の苺が寄り添っているようなイメージになりました。
背景の選び方で絵の方向性が決まるので、慎重に、且つ楽しんで決めていってください。
このようになりましたが、背景の塗り跡を見て何か気付きませんか?
このように、できるだけ一方向に向かって描いています。粒子の粗い絵の具を塗りやすくする為と、完成時に出来るだけ平滑な絵肌にする為です。
焦らず、ゆっくり面を埋める感じで描いてみてください。
⑦バック下塗り(2回目)
一度目の下塗りが完全に乾いたら2回目の上塗りをします。この時はさっき塗った方向とクロスするように塗ります。
こうすることでより平滑な絵肌に近づける事ができます。バックを塗る時も、ただ一様に塗るのではなく空感を意識して塗ります。空間を出すためには苺の周りは特に気を使って塗ります。作例では下塗りの時敢えてはみ出させた黄色を少し残すように塗りました。
この段階辺りから苺の細かい部分にも手を入れます。
⑧描き込み
いよいよラストスパートですね。(^^)この段階まで来ると図の大きな変更や、絵の方向性を変えることは出来ません。
ただただ描くのみ!!!!です( ´∀`)b
作例では苺全体の陰、種一つ一つの丸み、背景の空間感を描きました。
絵の仕上げの要は、どこで筆を置くか。これに尽きます。
描き込みすぎで絵が固くなってしまうことは避けねばなりません。どうしても絵が分からなくなったら一旦「やめや、やめやー!!!…寝る!」(-_-)zzzってのも有りです(笑)
起きてから改めて絵を見てみると結構冷静に見れますよ!隅々までチェックして納得が行ったら……
⑨完成!どやさっ!
…。
ち、ちょっとバックの陰描きすぎたかな。^_^;
まだまだしょーちん。も詰めが甘いっすわ。他人様にレクチャーしてる場合かっ!!ヽ(`Д´#)ノ(笑)
自分のサインを(日本画では落款(らっかん)と言います。)入れれば完成!
長い文章、読んで頂き有り難うございます。(*^_^*)
少しでも日本画制作の流れが分かっていただければ嬉しいです♪今度は個々の道具の扱い方や、もう少し細かい制作法をご紹介する予定なのでまた見に来てください〜(^_^)v それでは、
また、おこしやす つらら庵 ♪